第13回 歴史散歩
2010年5月15日北海道新聞「朝の食卓」掲載
<第13回「歴史散歩」本文>
JR札幌駅から中島公園まで、約2Kmの駅前通を真っすぐ南に歩いてみよう。新しい街から古い街へと、札幌の歴史をさかのぼるような気がして楽しい。超高層ビルJRタワーのある札幌駅前の地下に降りると、工事中の地下通路をガラス越しに見ることが出来る。後1年足らずで巨大な地下都市が誕生する。
大通公園を過ぎて5分も歩けば、明治初期からの歴史がある狸小路商店街だ。5丁目には「狸神社」と呼ばれる本陣狸大明神社がある。さらに南に行くと歓楽街ススキノだが、南7条では東に新栄寺、西に豊川稲荷が見える。この辺りは寺が多い。
駅前通の終点は中島公園だ。ここには移設された国指定重要文化財がある。江戸時代の茶室八窓庵と貴賓用ホテルとして明治13年に建築された豊平館である。最近注目されているのが東側の林の中に鎮座する「木下成太郎先生像」だ。作者の朝倉文夫は東洋のロダンと称される彫刻家だが、戦時中の金属供出のために400点余の彫像はほとんどが失われた。ブロンズ像として残された作品は珍しい。
札幌駅から中島公園への散歩は小さな旅だが、123年をたどる長い歴史の旅でもある。大通公園以北は未来の街、狸小路以南は歴史ある街、そんな印象を与えてくれる駅前通歴史散歩である。