2007年11月23日

怖い友人

2007/11/23

「怖い友人」         
ヤスさんと呼ばれる、やーさんみたいな友人がいました。長い付き合いですが、やはり少しは怖いのです。

相当昔のことですが、その怖さを見せ付けるような出来事がありました。混雑する地下鉄のホームでのことです。

ヤスさんは粋な男だから、割り込むような無粋な真似はご法度です。人ごみを歩くときは、「ごめんなすって」と右肩を引きながら、スイスイと通り抜けます。

しかし、大抵の場合は「お先にどうぞ」と譲ってしまうのです。これはヤスさんが粋と感じている「江戸しぐさ」と信じているからです。

こともあろうに、こんなとき「さっさと歩け!」と非難の声があがったから大変です。ヤスさんは振り向きざまに、ドスの利いた声で怒鳴りつけました「てめぇ、もう一度言ってみろ!」このど迫力に周りの人もビックリ、当の若者は直立したままブルブル震えている始末です。

パチンコ、競馬、マージャン何れもプロ級といわれているのに、なぜかボトルシップに凝っています。作っているところを見たことありますが、瓶の中で細い棒を巧みに操って組み立てて行くのです。難しく根気のいる作業に思えました。

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ヤスさんは転勤の挨拶に自分の作品である「船宿のボトルシップ」をもって来てくれました。なにぶん強面のやくざっぽい人ですから、少し緊張して、丁寧に応対しました。「こんな素晴らしい贈り物を有難うございます。大変な技ですね。我家の宝にします」

こちらが丁寧に出れば、更に丁寧に出るのがヤスさん流です。
「大変な技なんて、とんでもございません。貴方様が暗闇で御棒を巧みにあやつり、奥様のお腹の中に可愛いお坊ちゃんをお作りになるのに比べれば、ほんの子供だまし。お恥ずかしい限りです」
「あのぉ、どういう意味でしょうか?」

ヤスさんの態度がガラリと変わりました。洒落の分からない野暮天は大嫌いなのです。
「そうかい。まあ、いいや。世話になったなぁ。元気に暮らせよ」
「新任地でのご活躍を祈ります」と言うのが精一杯でした。

 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

「あのころは、私も若くて堅かった。少しは修行しましたよ」。
「お互い歳を重ねて、やわくなったもんだな」とヤスさん。

ヤスさんは私の心の中に沢山の想い出を残して、59歳の若さで急逝しました。
posted by nakapa at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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