2008年02月04日

<男>のお返し

2008/2/4

「<男>のお返し」  
懇親会の席でMさんに「この次の『男のエッセイ』はなに?」と聞かれた。 嬉しかったが、まだ何も決めていない。

「困りましたね〜。 どうしましょう」
「宴席だろう。座を盛り上げる為の。お世辞に決まっているじゃないか」
「期待して待っていたら、悪いじゃないですか」
「そんなことは絶対にない!聞いたことも忘れているはずだ」

でも、万が一ということもある。ともかく「なに書くの?」と問われたのは生まれて初めてだ。何が何でも「期待?」に応えたい。

すると、ある光景がパッと浮かんだ。 何でもないことかも知れないが、私にとっては夢のような出来事。こうして思いついたのが「80歳のラブレター」である。

拙いエッセイだが、僅かながらコメントを付けてくれる人もいる。「…80歳のラブレター、という意味がわからないのですが?」と書いてあった。

分からなくて当然だ。肝心な部分が抜けている。 ちゃんと読んでくれたから浮かんだ疑問だ。 この疑問には絶対に応えたい。顰蹙を買うことを覚悟で書くことにした。

「止めたほうがいいよ。変に思われるだけだ」
「充分修正しました。もし不快に思う人がいたら、ペンを折る覚悟です!」
「何を気取っているんだ。誰も気にしてないよ」
「変に思われると言ったじゃないですか!」
「勝手にしな」

ある夏の昼下がり、Bさんから突然電話がかかって来た。
「わたし。分かる。今あなたの家の前の公園。ちょっと出られる?」
なんだろう。小さな期待と不安が入り交ざった。ともかく出てみよう。公園はすぐそこだ。

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Bさんは私より年上で社交的でお洒落な人。何もかも私とは正反対だ。年上のご主人と大きな家で二人で暮らしている。

ベンチのある広場に行ってみたが、見当たらない。 見渡すと、やや遠くの方にスラックス姿の女性が一人。洒落た帽子にサングラス、脚を組んでタバコを吹かしていた。

遠目では歳は分からない。ひょっとしたらと思ったが、彼女はタバコを吸わないので違うだろう。アチコチ見渡したが、らしい人はいないので念の為近づいてみるとBさんだ。ニヤッと笑って開口一番こう言った。

「私、フランス映画みたいにタバコを吸いながら男を待ってみたかったの」
一瞬、これが先日のお詫びかなと思いながら「似合ってますよ。様になっています」とだけ言った。

この日から数日前、Bさんの友達と3人でお茶を飲んだ。遠来のお客様をもてなすつもりで、「ここは私が持ちましょう」と言うと、こともあろうに「私、男と認めた人からしか奢られたくないのよ」と来たもんだ。

一瞬ムッとしたが、これもBさん独特の気遣いかなと思いなおした。だけど、彼女はこの一瞬を見逃さなかったと思う。 だから、お返しに来たのだ。 

「男と認めない」を帳消しにする為「男を待つ」ことにした。 これで私もジイサンから男に昇格したわけだ。 

「よかったな。男になれて」
「誤解を与えるような発言は謹んでください!」
「なにっ?」
「いえ。何でもありません。誤解です」

「それで80歳からのラブレターはどうした」
「いろいろ都合がありまして」
「一体、何を考えているんだ!」
「寿命です」
「誰の?」
「…」
posted by nakapa at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記