2007年12月16日

謎の家族(続編)

2007/12/16

「謎の家族(続編)」
 〜あばかれた謎〜
私が女中さんと信じていた女性達が、実は寮に泊まっている女工さんと、兄から聞かされてショックを受けた。

「信じられんな。食事の世話する人、風呂に入れる人、幼稚園の送り迎えしてくれる人、遊びに連れて行ってくれる人。あれはみんな会社の女工さんのサービス残業だって?」
「ヒマそうな人を見つけては、お前のお世話を頼んでいたんだよ」
「しかし、お袋は奥様と呼ばれていたし、オレは坊ちゃんとしてチヤホヤされていたよ」

「そりゃ、よかったな。ところで、お袋の夢を知ってるかい?」
「男の子は慶応、女の子はフェリス、そして上品な家庭だらう。散々聞かされたよ」
「自分の子供3人と女工さんを使って上品な家庭劇の練習をしていたんだよ」
「親父はどうした」
「出番なし。上品とはほど遠いからな。お前は親父にそっくりと言われていたな」

「それは後の話だろう。幼かったオレは彼女達の温かさ、優しさで救われていたような気がするんだ。仕事でもないのに、どうしてそこまでやってくれたのか不思議だね」
「そこがお袋の上手いところさ。あの食料難の時代に、寮の食事と宴会の料理を仕切っていた。つまり食料を握っていたんだよ。たいていの無理は通るものだ」

「それだけかなぁ。ところで、その食料一体どこから持ってきたんだ。簡単には手に入らない筈だよ」
「ちょっと言いにくいんだが、親父が会社で糧食関係の仕事をしていたので、ちょと融通を利かせたんだ」
「融通だって? それは横領じゃないか」

「早い話、そんなことだ。天網恢恢疎にして漏らさず。ちゃんと成敗されているよ。その後が大変だ、家はおん出されるし、食べるものも着る物もない... ...」
「おいおい、ちょっと待てよ。行き着いた先は足の踏み場のないほど狭い*バラックだ。誰が何を話そうと、話は家中筒抜けだよ」     
*焼け跡で拾った焼けトタンなどで作られた小屋

 「それがどうした」
「お袋は毎日のように、戦前の豊かで優雅な暮らしぶりを話していたじゃあないか。各界の名士や海軍士官との派手な交遊についても、よく話していたな。 ダンスもしたと言ってたぞ。 兄貴だって聞いていたはずだ!」
「うん、聞こえたな。耳にたこだった」

「しがない管理人だったことを、長いことオレに秘密にしていたのは、お袋が哀れと思ったからか? それとも、一人くらい素直に聞いた方がいいと思ったからか?」
「秘密? そんなことないよ。必要もないし」
「それなら何故、何十年も黙っていたんだ!」
「聞かれなかったからなぁ。それに...」

「それに、なんだ」
「お前がお袋の話を真に受けていたとは知らなかったよ」
「オレが黙って聞いてるのを見れば、分かるはずだろう」
「分かるわけないよ。オレだって黙って聞いていたんだから」
posted by nakapa at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記